休職に関するトラブル

就業規則事例

就業規則条文例
(休 職)
第○条
1.従業員が、次の場合に該当するときは、所定の期間休職とする。
 ①私傷病による欠勤が1か月を超え、なお療養を継続する必要があるため勤務できないと認められたとき 6ヶ月以内
 ② 前号のほか、特別の事情があり休職させることが適当と認められるとき 必要な期間
2.休職期間中に休職事由が消滅したときは、元の職務に復帰させる。ただし、元の職務に復帰させることが困難であるか、又は不適当な場合には、他の職務に就かせることがある。
3.第1項第1号により休職し、休職期間が満了してもなお傷病が治ゆせず就業が困難な場合は、休職期間の満了をもって退職とする。

落とし穴
① 同一の事由での再休職や長期欠勤は、休職期間に通算する旨の条項がない。
② 休職から復帰する際の医師の診断書提出の条項がない。
③ 休職期間の延長規定がない。
トラブル事例
自動車運送業A社の運転手Bは、休日に交通事故に遭い、全治6ヶ月の重症を負った。同社の就業規則では、私傷病による休職は、最長で6ヶ月とし、休職期間が満了してもなお勤務できない場合には、退職扱いとする規定になっている。「ケガの回復は、予想以上に遅れているが、クビになったら大変なことになる」とBは、休職期間が満了する前日に退院し、翌日に出勤してきた。
しかし、まだ、本来の業務ができるほど完治しているわけではなかった上、無理がたたり、3日出勤しただけで、また入院することになってしまった。会社としては、Bの替わりの運転手Cを6ヶ月の短期契約で雇い入れていたが、契約が切れるので、新たにCと再契約を結ぶか、Bを解雇し、Cを正規採用するか判断に迷ったが、結局、Bの退院時期が不明な点や、退院しても以前と同じ業務ができるのかどうかという点で判断がつかなかったので、Bを解雇し、Cを正規採用することにした。その話を聞いたBは、「就業規則では、また6ヶ月休職できるはずだ。この解雇は無効だ。」と激怒し、退院したら会社を訴えてやるとA社の担当者に告げた。
解説
①休職期間の通算について
休職期間中は、一見会社に負担があまりないように思えますが、実は社会保険料を負担しなければなりませんし、一定期間だけ、代わりの人員を確保することも大変なことです。  
このケースでは、最長6ヶ月の休職期間が設けられています。休職期間としては、短い設定ですが、ここで問題なのは、2~3日復帰した後、また再度休職する場合です。○ヶ月以内に、同一の傷病や類似の事由で再度休職や欠勤したときは、これを通算する旨の条項があれば、このようなケースを防ぐことができます。

②医師の診断書提出について
原則として、使用者側からすれば、労働者が元の職務を遂行できるまで傷病が回復していなければ復職させる義務はありません。本人が復職を希望する際には、客観的な事実を確認するため、医師の診断書の提出を義務づけておくのが一般的です。さらに、会社の産業医や指定する医師の診断書を要求する会社もあります。

③休職期間の延長規定について
今回のケースでは、該当していませんが、仮に会社の中核を担う幹部が、休職した場合は、どうでしょうか?通常は、勤続年数が長くなる程、休職期間も段階的に長くするのが、一般的です。さらに、会社側の判断で休職期間を延長できる旨の条項を規定しておくことにより、万が一、幹部従業員が、休職期間満了してしまった場合でも、会社側の裁量で延長させることができ、幹部従業員の退職を防ぐことができます。

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