(発生状況)
工場で使う作業台等を注文製作するO社の熔接工Aは、電気ディスクグラインダ(以下、電動工具)で作業台の脚の切断作業を行っている時に、グラインダーの回転砥石が切断部分の突起に引っかかり、はずみで電動工具から手を離してしまったため、電動工具が飛び跳ねて、Aのあごの下の部分に回転砥石が当たって負傷した。幸い傷口が浅かったため5針の縫合せの処置で済み、休業もしなかった。
(傷病部位及び状況)
あご下部分、切り傷、5針縫合
(労災保険の申請)
① 療養補償給付の請求・・・様式第5号用紙を病院へ提出
⇒ 治療費の自己負担額 0円
(発生状況)
プラスチック成形品を製造するP社の進行係のBは、工場構内で、荷物の運搬作業中に他の係りの者と、立ち話をしていたところ、トラックへの積み込み作業をするフォークリフトがバックしてきたが、気づかなかったため、フォークリフト後部に接触し、転倒。転倒した際に左足首を骨折してしまった。
(傷病部位及び状況)
左足首骨折
(労災保険の申請)
① 療養補償給付の請求・・・様式第5号用紙を病院へ提出
⇒ 手術代・治療費・入院費の自己負担額は、 0円
② 休業補償給付の請求・・・死傷病報告書と様式第8号を監督署に提出
休業日数1ヶ月半(45日間)
(Bの給料)
基本給220,000円、通勤費7,000円、時間外手当16,000円
給付基礎日額8,010円×0.6×42(3日待期期間)=201,852円
特別支給金 8,010×0.2×42(3日待期期間)=67,284円
⇒ 休業補償給付の額は、 約202,000円
⇒ 休業特別支給金は、 約67,000円
(発生状況)
自動車用プレス部品を製造するQ社のプレス機械工のCは、プレス機(30トン)でのブッシュかしめ工程の段取り作業の際、急でいたため、上部金型(パンチ)の固定ボルトを仮締め状態のまま、加工作業を開始してしまった。しばらくして、部品を右手でセットした瞬間、上部金型(パンチ)落下し、右手人差し指、第一関節がはさまれて切断してしまった。
(傷病部位及び状況)
右手人差し指、第一関節切断
(労災保険の申請)
① 療養補償給付の請求・・・様式第5号用紙を病院へ提出
⇒ 手術代・治療費・入院費の自己負担額 0円
② 休業補償給付の請求・・・死傷病報告書と様式第8号を監督署に提出
休業日数2ヶ月(61日間)
(Cの給料)基本給250,000円、通勤費5,000円、時間外手当10,000円
⇒ 給付基礎日額8,641円×0.6×58(3日待期期間)=300,706円
特別支給金 8,641×0.2×58(3日待期期間)=100,236円
⇒ 休業補償給付の額 約301,000円、休業特別支給金 約100,000円
③ 障害補償給付の請求
傷口の痛みも引いたため、休業2ヵ月後職場復帰し、障害補償給付を請求。
障害等級第14級の6に該当
一時金 8,641円×56日分 = 483,896円
⇒ 障害補償給付の一時金 約484,000円、障害特別支給金 80,000円
(発生状況)
精密機械部品を切削加工するR社の機械工のDは、15㎏程度の製品箱を毎日30分に1回程度、持ち上げてパレットに積み込む作業をしていた。ある日、いつものようにその製品箱を持ち上げたときに、急に腰に激痛が走り、一時立ち上がれなくなった。やむをえず会社を早退し、病院に行くと、ぎっくり腰と診断され、2週間会社を休んだ。
(傷病部位及び状況)
ぎっくり腰
(労災保険の申請と認定されない理由)
会社は、早速、労災保険の申請をした。2週間ほどして、労働基準監督書からDの日常の作業内容やぎっくり腰が発生したときの状況について問い合わせの電話があった。対応した総務部長は、現状の作業内容等についてありのまま話をした。すると、監督署の担当者は、今のお話を伺った限りでは、今回のぎっくり腰を労災と認定することはできません。という回答が帰ってきた。総務部長は、納得できないので、認定されない理由について質問したところ、腰痛の労災認定基準について下記のような説明がなされた。
労災事故による負傷などの原因により発症した腰痛以外の腰痛を「非災害性腰痛」と言います。この「非災害性腰痛」として労災認定される業務には、「重量物を取り扱う業務」と「腰部に過度の負担がかかる業務」があります。
「重量物を取り扱う業務」とは、おおむね30㎏以上の重量物を労働時間の3分の1程度以上又はおおむね20㎏以上の重量物を労働時間の2分の1程度以上取り扱う業務です。
「腰部に過度の負担がかかる業務」とは、おおむね20㎏以上の重量物又は軽量不同の物を繰り返し中腰で取り扱う業務等長時間に渡って同一姿勢を持続する必要のある業務などです。
Dさんの場合は、15㎏程度の製品箱を30分に1回、近距離を運搬する作業であり、「重量物を取り扱う業務」にも「腰部に過度の負担がかかる業務」にも該当しません。したがって、労災として労災保険を適用するのは困難です。
説明に納得した総務部長は、仕方なく労災保険の申請を取り下げる旨を監督署の担当者に伝え、その後、受診した病院に電話をして、労災による受診から健康保険による受診に切り替えてもらった。
(発生状況)
人材派遣会社S社の派遣社員のEさんは、自宅のアパートから派遣先の会社へ向かう通勤途中の歩道橋で階段を昇る途中、つまづいて転倒した。転倒した際にとっさについた右手首に激痛が走った。やむをえず、会社に欠勤の連絡をして、病院に行くと右手首の骨折と診断され、結局3ヶ月会社を休んだ。
(傷病部位及び状況)
右手首の骨折
(労災保険の申請)
① 療養給付の請求・・・様式第16号の3用紙を病院へ提出
⇒ 治療費の自己負担額 0円
② 休業給付の請求・・・様式第16号の6を監督署に提出
休業日数3ヶ月(92日間)
(Eさんの給料)基本給180,000円、通勤費5,000円、時間外手当5,000円
給付基礎日額6,196円×0.6×89(3日待期期間)-200
(通勤災害の場合一部負担金200円減額)= 330,666円
特別支給金 6,196×0.2×89(3日待期期間)= 110,289円
⇒ 休業給付の額 約331,000円、休業特別支給金 約110,000円